2024年09月06日
中根英登さん(自転車競技 ロードレース)インタビュー【第2回】
自転車ロードレースのプロチーム「愛三工業レーシングチーム」専任アドバイザーの中根英登さん(34)は、2018年のアジア競技大会(ジャカルタ・パレンバン)で5位入賞したトップアスリートです。
インタビュー第2回では、ジャカルタでの経験と、地元で開かれる2026年の大会への想いを聞きました。
中根さんは、日本における自転車競技の人気には「伸びしろがある」といいます。
愛知・名古屋を平均時速40㎞の自転車が駆け抜ける大会本番は、競技の魅力を広める絶好の機会。競技のさらなる普及と、後進の育成への期待を語ってくれました。
取材・構成は、中野祐紀と澤木誠矢が担当しました。
※年齢は取材時のものです。
インタビュー第2回では、ジャカルタでの経験と、地元で開かれる2026年の大会への想いを聞きました。
中根さんは、日本における自転車競技の人気には「伸びしろがある」といいます。
愛知・名古屋を平均時速40㎞の自転車が駆け抜ける大会本番は、競技の魅力を広める絶好の機会。競技のさらなる普及と、後進の育成への期待を語ってくれました。
■総合大会で活躍して「メジャー」に
―国際大会について、アスリートの視点から語っていただけますか。
プロになってからは海外で活動する年数の方が長かったので、国際大会というのが当たり前という世界でやっていました。ただ、総合スポーツ大会であるオリンピックとアジア大会は特別ですね。特に日本人はオリンピック至上主義のところがあって、そこが一番注目されるので。自転車ロードレースは世界的にはメジャースポーツの一角ですが、日本ではまだ浸透しきれていない部分があります。注目を浴びるオリンピック、アジア大会での活躍は、自転車を日本でもメジャースポーツにするにはマストだと考えて、重要視していました。
2018年のジャカルタ・アジア大会には日本代表で出場して、「アシスト役」としてチームメイトの銀メダルに貢献させてもらえました。やはり、メダル獲得につながる走りができて良かったかな、と思っています。当時はリザーブ選手でしたが、出場を予定していた選手の故障があって、急遽代表に呼ばれました。代わった選手のためにも「絶対結果を残してやろう」と強く思ってレースに臨みました。
ジャカルタのコースは、自分に向いているフィニッシュに向かって登りが続くコースでした。「エース」を支える「アシスト」をしてほしいというチームの作戦ですから、それに徹してチームメイトを支えました。自転車ロードレースにも役割分担があります。送りバントがある野球やパスを供給する選手が必要なサッカーと同じですね。自分のエゴよりもチームの勝ちを優先しました。
―自転車ロードレースの競技の魅力や、練習法などを教えてください。
まず、レースの距離が長いですね。陸上のマラソンよりもはるかに長い150㎞を走ることもあります。それをアベレージ時速40㎞くらいの高速で駆け抜けます。獲得標高(レース中に登る標高差)が3000mを超えるような高低差のあるレースもあります。
僕が現役でヨーロッパのプロチームにいたころは、トレーニングとレースで月に3000㎞、年間で30000㎞走っていました。プロのトレーニングコーチが練習メニューを組み、(ペダルをこぐ力を数値化する)パワーメーターから、インターネット経由で送られた各種の速度や心拍数などのデータを把握します。練習時間以外も、睡眠を記録する機器も着けて、徹底的に体調を管理する世界。チームには、専属のシェフもいて、戦える体を作ります。
―当時の経験が、日本での指導にも活かせていますか。
自分が世界のトップチームでやってきたこと、見てきたものは、専任アドバイザーを務める愛三工業レーシングチームや、日本代表に惜しみなく還元するようにしています。日本の全体の実力の底上げに少しでもつながってくれればと思っています。
日本では、代表チームですら、ヨーロッパのトップチームとは予算規模が違うという現実がありますが、限られた中でも取り入れられることがあります。ただ、できれば若手には一度は自分の目でヨーロッパのトップを見て、体感してきてもらいたいと考えています。
―国際大会について、アスリートの視点から語っていただけますか。
プロになってからは海外で活動する年数の方が長かったので、国際大会というのが当たり前という世界でやっていました。ただ、総合スポーツ大会であるオリンピックとアジア大会は特別ですね。特に日本人はオリンピック至上主義のところがあって、そこが一番注目されるので。自転車ロードレースは世界的にはメジャースポーツの一角ですが、日本ではまだ浸透しきれていない部分があります。注目を浴びるオリンピック、アジア大会での活躍は、自転車を日本でもメジャースポーツにするにはマストだと考えて、重要視していました。
2018年のジャカルタ・アジア大会には日本代表で出場して、「アシスト役」としてチームメイトの銀メダルに貢献させてもらえました。やはり、メダル獲得につながる走りができて良かったかな、と思っています。当時はリザーブ選手でしたが、出場を予定していた選手の故障があって、急遽代表に呼ばれました。代わった選手のためにも「絶対結果を残してやろう」と強く思ってレースに臨みました。
ジャカルタのコースは、自分に向いているフィニッシュに向かって登りが続くコースでした。「エース」を支える「アシスト」をしてほしいというチームの作戦ですから、それに徹してチームメイトを支えました。自転車ロードレースにも役割分担があります。送りバントがある野球やパスを供給する選手が必要なサッカーと同じですね。自分のエゴよりもチームの勝ちを優先しました。
―自転車ロードレースの競技の魅力や、練習法などを教えてください。
まず、レースの距離が長いですね。陸上のマラソンよりもはるかに長い150㎞を走ることもあります。それをアベレージ時速40㎞くらいの高速で駆け抜けます。獲得標高(レース中に登る標高差)が3000mを超えるような高低差のあるレースもあります。
僕が現役でヨーロッパのプロチームにいたころは、トレーニングとレースで月に3000㎞、年間で30000㎞走っていました。プロのトレーニングコーチが練習メニューを組み、(ペダルをこぐ力を数値化する)パワーメーターから、インターネット経由で送られた各種の速度や心拍数などのデータを把握します。練習時間以外も、睡眠を記録する機器も着けて、徹底的に体調を管理する世界。チームには、専属のシェフもいて、戦える体を作ります。
―当時の経験が、日本での指導にも活かせていますか。
自分が世界のトップチームでやってきたこと、見てきたものは、専任アドバイザーを務める愛三工業レーシングチームや、日本代表に惜しみなく還元するようにしています。日本の全体の実力の底上げに少しでもつながってくれればと思っています。
日本では、代表チームですら、ヨーロッパのトップチームとは予算規模が違うという現実がありますが、限られた中でも取り入れられることがあります。ただ、できれば若手には一度は自分の目でヨーロッパのトップを見て、体感してきてもらいたいと考えています。
■アジア大会がチャンス
―愛知・名古屋で開かれるアジア大会をどういう機会としてとらえていますか。
自転車ロードレースにとって、競技のすそ野を広げるとても大きなチャンスだと思っています。ロードが他の種目と大きく違うのは、スタジアムではなく、街に溶け込んだ公道が競技会場になるということです。マラソンと同じく、自分の家の前がレース会場になることもある。まだ触れたことのない人たちにもすごく親しみやすいと思います。レースの日は、コース周辺の移動がしづらくなるなどご不便もおかけしますが、ぜひ、お祭りとして楽しんでもらえればうれしいです。
レース本番は、ものすごいスピードで走り抜ける自転車を間近に見ることができます。初めての方にも「人ってこんなに速いスピードで走れるんだ!」と興奮してもらえると思います。普段、通勤や通学で通る所がレース会場として、テレビ中継に映る楽しみもありますが、迫力を実感するには、現地観戦が一番です。
自転車ロードレースは、日本ではマイナースポーツであるだけに、人気の伸びしろは大いにあると思っています。
お正月にテレビ中継がある程に人気の駅伝やマラソンと同じように、自転車ロードレースも街並みの中を速い速度で駆け抜けていく迫力が有るので、アジア大会を機に、魅力をお伝えできるはずです。
今年の9月8日には、アジア大会のロードレースの候補地に仮決定しとなっている愛知県新城市の公道を使って第1回新城ロードレースを開催できることになりました。公道を封鎖するのにはやはり地元の方々のご理解も必要なので、大会とはこういうものだよとお見せして、魅力を伝えたいと思います。自転車だけではなくて、同じ公道を走る乗り物の車を含むモビリティとか、食とかも楽しめるコラボレーションイベントになりますので、お時間ある方はぜひ、お運びいただきたいです。桜淵公園がメイン会場になります。(新城モブ)
―愛知・名古屋で開かれるアジア大会をどういう機会としてとらえていますか。
自転車ロードレースにとって、競技のすそ野を広げるとても大きなチャンスだと思っています。ロードが他の種目と大きく違うのは、スタジアムではなく、街に溶け込んだ公道が競技会場になるということです。マラソンと同じく、自分の家の前がレース会場になることもある。まだ触れたことのない人たちにもすごく親しみやすいと思います。レースの日は、コース周辺の移動がしづらくなるなどご不便もおかけしますが、ぜひ、お祭りとして楽しんでもらえればうれしいです。
レース本番は、ものすごいスピードで走り抜ける自転車を間近に見ることができます。初めての方にも「人ってこんなに速いスピードで走れるんだ!」と興奮してもらえると思います。普段、通勤や通学で通る所がレース会場として、テレビ中継に映る楽しみもありますが、迫力を実感するには、現地観戦が一番です。
自転車ロードレースは、日本ではマイナースポーツであるだけに、人気の伸びしろは大いにあると思っています。
お正月にテレビ中継がある程に人気の駅伝やマラソンと同じように、自転車ロードレースも街並みの中を速い速度で駆け抜けていく迫力が有るので、アジア大会を機に、魅力をお伝えできるはずです。
今年の9月8日には、アジア大会のロードレースの候補地に仮決定しとなっている愛知県新城市の公道を使って第1回新城ロードレースを開催できることになりました。公道を封鎖するのにはやはり地元の方々のご理解も必要なので、大会とはこういうものだよとお見せして、魅力を伝えたいと思います。自転車だけではなくて、同じ公道を走る乗り物の車を含むモビリティとか、食とかも楽しめるコラボレーションイベントになりますので、お時間ある方はぜひ、お運びいただきたいです。桜淵公園がメイン会場になります。(新城モブ)
■難しいこと抜きに
―今後の夢、目標を教えてください。
やはり、2026年のアジア大会は地元で開かれる大会ですから、愛三工業レーシングチームから、2026年の日本代表選手を輩出したいです。出場だけで満足する選手ではなく、勝つという強い意志を持った選手を選び、結果を残してもらうことが目標です。現地でその代表選手の活躍を見た子どもたちが、「自転車って楽しそうだな」と思ってくれて、4年後、8年後のアジア大会に出られるような選手に育てば素晴らしいです。まず、子どもたちは難しいこと抜きに「あ、すげぇ!」「速ぇ!」「格好いい!」で良いので、本物の魅力を感じてもらいたいと思います。
―今後の夢、目標を教えてください。
やはり、2026年のアジア大会は地元で開かれる大会ですから、愛三工業レーシングチームから、2026年の日本代表選手を輩出したいです。出場だけで満足する選手ではなく、勝つという強い意志を持った選手を選び、結果を残してもらうことが目標です。現地でその代表選手の活躍を見た子どもたちが、「自転車って楽しそうだな」と思ってくれて、4年後、8年後のアジア大会に出られるような選手に育てば素晴らしいです。まず、子どもたちは難しいこと抜きに「あ、すげぇ!」「速ぇ!」「格好いい!」で良いので、本物の魅力を感じてもらいたいと思います。
取材・構成は、中野祐紀と澤木誠矢が担当しました。
※年齢は取材時のものです。
中根英登(なかね・ひでと)さんプロフィール 1990年5月2日生まれ。愛知県名古屋市出身、同県東浦町在住。中京大卒。自転車ロードレースのトップ選手としてヨーロッパのプロチームに所属して転戦し、2018年の第18回アジア競技大会(ジャカルタ・パレンバン)で5位入賞を果たした。22年に現役引退。現在は愛三工業レーシングチーム専任アドバイザー。24年のパリオリンピックでは日本代表コーチ。 |