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2023年10月03日

【第二回】自分たちが満足できる演技で、観ている方に感動を与えたい(2020年東京オリンピック 新体操 団体総合 8位・2019年世界新体操選手権大会 団体総合 2位 竹中七海選手)

中学2年生の頃、新体操日本ナショナルチームの練習生に合格。候補生を経て、高校1年生の時に見事、代表入りを果たした竹中七海選手。その後、代表チームに入りながらも出場が叶わなかった2016 年リオデジャネイロオリンピックでの悔しい気持ちをバネに、数々の国際大会で活躍し、成果を上げています。

団体メンバーの一員として挑んだ2019年の世界新体操選手権大会では、団体総合に加え、種目別フープとクラブで2位、種目別ボールでは金メダルに輝くなどチームに貢献。世界の頂点も視界に入った中で臨んだ2020年東京オリンピックでは、チームの主軸となって初のオリンピックを経験しました。

国際大会、海外遠征、合宿など年間350日以上にわたり、ナショナルチームでの共同生活を送る竹中選手。第二回のインタビューは、海外でのエピソードから、世界で戦う本音や舞台裏の話まで満載です。



 
Interviewer
これまでのキャリアの中で、印象に残っている大会や試合についてお聞かせください。

竹中七海選手
リザーブメンバーとして選出された2016年リオデジャネイロオリンピックの翌シーズンのことです。
イタリアで開催されたW杯の際、ある選手が試合直前の練習でけがをしてしまい、出場できなくなるというトラブルがありました。その時、補欠として帯同していた私が急遽出場することになったんです。
私にとっては、W杯デビュー戦となったこの大会。周囲の先輩方にカバーしていただき、何とか最低限のやるべきことはクリアできたのですが、突然のことだったので無我夢中という感覚しかなくて、うれしさと悔しさが半分半分という気持ちでした。
いつ、どんな時に出番が回ってくるかわからない、いつでも自分の力を発揮できるように努力を重ね、万全の準備をしておかなくてはいけないのだということを改めて突き付けられた、印象深いデビュー戦になりました。




 
Interviewer
合宿や海外遠征も含め、年間350日以上は代表チームで共同生活をしているそうですね。心がけていることは?

竹中七海選手
合宿中や遠征中は、寝る時間以外はほぼメンバーと一緒に過ごしているので、常日頃からコミュニケーションをすごく重要視しています。
特に新体操の団体競技の場合、演技中も仲間が取りやすい所に手具を投げるとか、お互いに動きやすいような配置を心がけるとか、思いやりの心を持つことが良い演技にもつながります。
だからこそ普段の生活を通じて、お互いが気持ちよく暮らせるように、次の人が使いやすいようにという優しさや心配りが、当たり前にある雰囲気を育むことが大切なのです。
こういう習慣やメンタルの重要性は、先輩方から代々受け継がれていることなので、後輩たちにもしっかり伝えていきたいですね。






 
Interviewer
海外でコンディションを整えるために心がけていることや、持参する必需品はありますか。

竹中七海選手
お湯で温められるご飯や即席味噌汁の素、豆味噌を加工したチューブ入り甘辛味噌は必須アイテムです。あと、納豆が好きなので、チューブタイプの納豆の麹漬けを見つけてからは、常連に加えています。
また、長期の海外合宿に臨む時などは、現地の食事がどうしても口に合わないこともあるので、とにかく調味料をたくさん持参します。
もともと食べることが大好きなこともありますが、食事制限をし過ぎると体力的に動けなくなり、けがのリスクにもつながるので、必要な栄養素やバランスは気にしながらも、しっかり食べることが私流の体づくりです。
オフの期間に地元の友人と食事に行くと「よく食べるね」って驚かれるくらいなんですよ。

Interviewer
シーズンを終えて帰国する際、楽しみにしていることはありますか?

竹中七海選手
帰国前にはいつも「食べたい物リスト」を考えるのですが、一番は母が作る煮物です。海外にいるといつも母の味が恋しくなるので、時間があれば、レシピを伝授してもらおうと思っています。それから甘い物が大好きなので、なごやめしでもある餡子スイーツ! 帰国したら真っ先に食べたい好物の一つです。

Interviewer
長年にわたってナショナルチームの一員として活躍する竹中選手ですが、年代ごとに日本代表に対する思いに変化はありますか?

竹中七海選手
私は中学生の時にフェアリージャパンの練習生に選んでいただいたのですが、目に留まるような成績を残せていなかったので、代表メンバーに入れるかどうかぎりぎりのところで、毎シーズン調整を続けていました。だから、高校1年生で正式なメンバーとして初めて選出していただいた時は、「憧れのチームに入ることができた!」という喜びでいっぱいでした。
でもそこから、リザーブメンバーだった2016年リオデジャネイロオリンピックを経て、国際大会で戦う場面も多くなり、日本代表ということへの意識や責任感が少しずつ高まっていった気がします。
そして、2020年東京オリンピックが近づくにつれ、世界的な舞台で日の丸を背負って戦うということに、プレッシャーを感じるようになりました。

Interviewer
プレッシャーと向き合うために意識したことはありますか?

竹中七海選手
フェアリージャパンとして大会に出る喜びが、徐々にプレッシャーに変わり始めていた時期は確かにあったと思います。そのたびに「とにかく、自分たちが求めている、満足のいく演技を試合の舞台でやりきること」だけを意識するように、自分自身に言い聞かせていました。
もちろん「良い成績を残さなくては」、「期待に応えなくては」という思いに押しつぶされそうなこともあります。
でもこれまでの経験から、「自分たちが最後までやりきったと感じられた時こそ、結果的には、観ている方にも一番感動を与えることができる。自分たちが満足のいく演技をすることで、きっと観ている方にも喜んでいただける」という確信があるので、その思いに立ち返るようにしています。





 
Interviewer
海外の選手や世界の舞台で活躍する他の選手から学ぶこと、刺激を受けることがあればお聞かせください。

竹中七海選手
リザーブメンバーとして帯同させていただいたばかりの頃は、それまで映像でしか見たことのなかった選手を間近で見られるというだけで、すごく興奮しました。映像を通して観ていた海外の選手は、ミスを恐れない、緊張とは無縁の“鉄人”のようなイメージだったんです。
でも、本番前の練習で入念に準備をして演技の確認をし、緊張する気持ちと戦っている一流選手たちの様子を目の当たりにして「最初から完璧な人なんていない。ミスをしたら修正をする、できないことをなくすために力を尽くすんだ」という当然のことを実感しました。
それまで雲の上にいる憧れのスターというイメージだった世界の選手たちも、共に夢に向かって努力を続ける仲間なのだという感覚を抱いたことを覚えています。




 

合宿中や遠征中は、寝る時間以外はほぼメンバーと一緒に過ごしているので、常日頃からコミュニケーションがすごく重要です。共同生活の中でも、お互いが気持ちよく暮らせるように、優しさや心配りを大切にしています。特に新体操の団体競技の場合、仲間との呼吸が演技を左右するので、そういう日々の積み重ねが演技の出来映えにもつながると思います。





ナショナルチームの一員として長きにわたって海外を転戦する竹中選手。環境の変化に動じることなく、ベストな状態を保つためには大好きな食べ物が欠かせないようです。持参する物の中には豆味噌があり、帰国後の「食べたい物リスト」には餡子スイーツ。愛知県のソウルフードが、竹中選手の活躍の源になっているようです。

第三回は、愛知県出身の竹中選手に、地元で開催される愛知・名古屋アジア競技大会についてうかがいます。世界を転戦しながら第一線で活躍し続ける竹中選手に、国際大会が地元で開催されることへの期待感や、スポーツの楽しみ方をうかがいます。


<第三回 2023年10月10日(火曜日)掲載記事につづく>