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2023年08月29日

【第三回】アジア競技大会を機に、スポーツを愛する人の輪を広めたい (2004年アテネオリンピック・2008年北京オリンピック 柔道女子63kg級 柔道金メダリスト 谷本歩実さん)

現役引退後も、柔道家としてのみならず、大学講師や指導者、公益財団法人日本オリンピック委員会理事など、様々な立場からスポーツ界の発展のために多方面で活躍する谷本歩実さん。地元である愛知県で開催されるアジア競技大会に向けても、大会に関する懇談会の委員に名を連ね、大会エンブレム発表会に出席するなど、大会運営のキーパーソンとして尽力してくださっています。

最終回となる第三回のインタビューでは、愛知県で開催されるアジア競技大会に寄せる思いや、今大会を通じて未来へつなげたいスポーツの魅力などを語っていただきました。


 
Interviewer
地元開催となる愛知・名古屋アジア競技大会に向けての思いをお聞かせください。

谷本歩実さん
子どもたちをはじめ、一人でも多くの方にとって、世界水準のスポーツに触れていただく機会になればうれしいなと思っています。トップアスリートが真剣に挑む姿を目の当たりにすることで、スポーツの面白さを感じ、心が動く瞬間を味わっていただきたいというのが私の願いです。

Interviewer
2020年東京オリンピックの際には、組織委員会の理事として携わっていらっしゃいました。その時の経験から感じることはありますか?

谷本歩実さん
当時は、1年延期した後にコロナ禍での開催ということで、準備していたものの実現できなかったこと、構想だけで終わってしまったことがたくさんありました。例えば子どもたちがアスリートと触れ合う体験の場を設けるというプロジェクトもその一つです。
だからこそ今回は、故郷でのアジア競技大会開催という好機を最大限活用し、2020年東京オリンピックで叶わなかったことも含めて実践したいですね。
愛知県というのはスポーツが盛んであり、所縁のある一流アスリートが大勢います。またスポーツに対して親しみを持ち、理解を深める土壌がある恵まれた環境だと思います。
できる限り多くのアスリートに声を掛け、選手や元選手と地元の方が直接触れ合えるような場を数多くつくれたら素敵だなと思います。


 
Interviewer
アスリートの方々から、愛知・名古屋アジア競技大会に向けて期待する声は寄せられていますか?

谷本歩実さん
オリンピックで無観客を経験したことにより、観客の前で戦えることへの感謝の気持ちやありがたさを痛感したアスリートは大勢います。だからこそ、地元に縁のあるアスリートのみならず、愛知・名古屋で開催されるアジア競技大会で「何か手伝えることはないか」、「協力したい」という声は本当にたくさんいただいています。
そういった思いを抱いてくださっているアスリートの方々の力を結集し、スポーツでつながる輪を広げていく大会にしたいですね。

Interviewer
世界的なスポーツの大会が開催され、ライブで観戦できるということは、愛知県の方にとってどのような影響をもたらすのでしょうか?

谷本歩実さん
私が幼い頃、父に連れて行ってもらった競馬場で、馬が走る足音や地面が振動する迫力に圧倒されたように、ぜひ皆さんにも心が震える感覚を体感していただきたいですね。
そういった経験が、将来の世界的なアスリートを生むかもしれないという期待感はもちろんのこと、観る、支えるなど様々な視点から、スポーツを愛する人を増やすきっかけになると思います。
そのために、例えばスポーツに関する職業体験のテーマパークを開催するというのもアイデアの一つです。特に子どもたちに向けては、スポーツを実況するアナウンサー、伝える記者、チームスタッフや審判など、それぞれの形でスポーツと関わりを持てること、いろいろな携わり方があるということを伝えたいですし、誰もが主役になれるということを実感できる場をつくりたいですね。



 
Interviewer
ホストタウンとなる愛知県の皆さんに期待することは?

谷本歩実さん
愛知県の方って、すごくフレンドリーな方が多いので、その点は全然心配していません。誰にでもお友だち感覚で、分け隔てなく話しかけることのできる県民性があると思うので、普段の雰囲気そのままに、ぜひ海外の方も温かくおもてなししていただきたいですね。

Interviewer
愛知・名古屋アジア競技大会を観戦するにあたり、楽しみ方のコツやアドバイスはありますか?

谷本歩実さん
大会が迫ってくると、各地で種目ごとに代表選手を決める最終選考会が開催されます。出場権をかけて戦うピリピリとした緊張感があり、いろいろなドラマが繰り広げられることでしょう。
本大会を目指す最終選考会で起こるであろう笑いあり涙ありのドラマを知った上でアジア競技大会を観ていただくと、まったく違った視点で楽しめますし、より深く記憶に刻まれると思います。




 
Interviewer
最後に、今後の日本スポーツ界にとって、今回の愛知・名古屋アジア競技大会が果たす役割についてお聞かせください。

谷本歩実さん
日本のスポーツ界は現在、振興や発展を目指す上で“強化”という部分がフォーカスされがちです。しかし、世界に目を向ければ、スポーツには多様な価値があり、スポーツこそが生きる力につながるという思考が浸透している国や地域もあります。
強くなることにばかり力を入れると、そこから排除されてしまった子どもたちは、もしかしたらスポーツ嫌いになってしまうかもしれません。それよりは、適性に応じてそれぞれの役割やスタンスでスポーツと一生関わっていけるよう、まずは一人ひとりがスポーツを楽しむことができる環境づくりが大切ではないでしょうか。
そのためにも、今回の愛知・名古屋アジア競技大会を通じ、スポーツならではの感動の輪を広げたいです。そして、一人ひとりの心が動いた経験を一過性のもので終わらせず、継続的にスポーツに関わってくださる人を増やしていくようなムーブメントに繋げていけたらと考えています。




 

愛知県には、スポーツの魅力を発信し、定着させていくために絶好の環境があります。今回の愛知・名古屋アジア競技大会を機にアスリートたちの力を結集し、スポーツを通じて感動の輪を広げていくのが願いです。そして、スポーツに関わる人を増やしていく、継続的なムーブメントへとつなげていきたいです。




世界の第一線で戦い続けてきた経験をもとに、アスリートを支える、スポーツを広めるなど、様々な立場から精力的に活動を続ける谷本歩実さん。故郷である愛知県で開催されるアジア競技大会に向けて、アスリートや地元の人たちを巻き込み、スポーツ界にとって大きなムーブメントを起こしてくださることに期待感が高まります。

<第三回 完>




【第一回】美しく芸術的な“一本”に憧れて、向上心を抱き続けた子ども時代(2004年アテネオリンピック・2008年北京オリンピック 柔道女子63kg級 柔道金メダリスト 谷本歩実さん)
【第二回】妹やライバルの存在に奮起し、オリンピック連覇を達成(2004年アテネオリンピック・2008年北京オリンピック 柔道女子63kg級 柔道金メダリスト 谷本歩実さん)