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2023年05月16日

【第二回】国境や時間を超えて、心をつなぐスポーツの力(元プロ野球選手 藤井淳志さん)

野球の楽しさに魅せられ、幼い頃からプロ野球選手になるという強い信念を持ち続けた藤井淳志さん。
二回目となる今回のインタビューでは、プロ野球の世界で活躍するきっかけとなったメンタルコントロールの話から、世界の舞台で脚光を浴びる選手に見る共通点など、興味深いお話が満載です。
トップアスリートとして闘い抜いた、藤井さんならではの視点にも注目してください。

※写真撮影時のみマスクを外しています。


 
Interviewer
現役時代、印象に残っているゲームはありますか?

藤井淳志さん
初打席や初ヒットの場面、地元・豊橋の野球場でのサヨナラ本塁打ですね。

Interviewer
現役時代の藤井さんと言えば、チャンスに強く「ここぞ」という時に頼りになる選手という印象があります。勝負強さの秘訣は?

藤井淳志さん
実は野球を始めた小学生の頃からプロに入るまでずっと、勝負どころでなかなか活躍できない選手だったんです。プロに入ってからも長い間、チャンスで結果が残せない時期が続いて…。
でも、プロで数年キャリアを積んだ頃、ふとしたきっかけで考え方を変えてみたんです。



 
Interviewer
どのように気持ちを転換したのですか?

藤井淳志さん
それまでは、チャンスに打順が回ってくると「自分が何とかしなければ」と意気込みばかり強くなってしまい、無駄な力が入っていたんだと思います。
でも「こういうボールを打てば、こういう結果になる」と客観的に分析して考えるようにしてみたんです。
そうしたら「好機に打順が回ってきた時に結果が残せる、つまりヒットや犠牲フライを打てるボールにだけ手を出そう」と冷静に割り切ることができるようになりました。
チャンスボールを待ち構える余裕が生まれたことで、ピッチャーの甘いボールを見逃したり、厳しいボールに手を出したりすることが減ったんだと思います。

Interviewer
チャンスをモノにするためには、メンタルコントロールが大切なのですね。

藤井淳志さん
アスリートにとっては「チャンス=ピンチ」でもあるわけです。
例えばプロ野球の世界で、1軍と2軍を行ったり来たりしているような若手選手の場合、やっとの思いで1軍の試合に出場できてチャンスに打席が回ってきた時というのは、ピンチと紙一重。結果が出せなければ、また2軍に落とされてしまいますし、その後の行方を大きく左右する一打席になる。プロってそういう厳しい世界なんです。
でも「今は相手の方がピンチ、自分にとっては大チャンス!」と思うことで、相手よりも優位な立場に立っているような気持ちになれますよね。
そうやって、一つひとつの頭の中のネジを調整していったんです。



 
Interviewer
藤井さんは中南米のウインターリーグに派遣された経験をお持ちです。海外でプレーした経験を通して感じたこと、得たものはありますか?

藤井淳志さん
自分がいかに恵まれた環境で、野球に打ち込めていたのかということを突き付けられました。
現地の選手たちはハングリー精神の塊で、野球に対してものすごくストイックです。
帰国後、日本で野球をできることや、チャンスを与えられていることに感謝の気持ちを抱くようになり、野球と向き合う姿勢に大きな影響を与える経験になりました。


Interviewer
ウインターリーグ時代、印象に残っているエピソードがあればお聞かせください。

藤井淳志さん
現地ではあまり活躍できずにいたのですが、日本への帰国を控えた直前の試合でヒットを打ったんです。当時、その国では初となる日本人の野手だったこともあり、翌日、現地新聞の一面で大きく取り上げてもらえて。すごくいい思い出になりました。
当時の新聞紙面は、今でも実家に保管されていると思います。

Interviewer
異国の地でも勝負強さを発揮されて、すごいですね!

藤井淳志さん
選手時代を通じて、それほど華々しい記録は残せませんでしたが、「記憶」に残るプレーはできたかなと思います。いろいろなシーンがファンの方の「記憶」に刻まれていたら嬉しいですね。

Interviewer
帰国後も当時のチームメートと交流はありましたか?

藤井淳志さん
在籍していたときは言葉も通じないので、通訳を介して食事を共にする程度。それほど交流を深めることはできませんでした。
でも、海外リーグでも活躍し、後に同じ球団でチームメートになった選手とは「久しぶり!」という感じで再会を喜び合いました。
国境も時間も超えて、すぐに心を通わせることができるのも、同じ目標に向かって共に戦った経験があればこそだと思います。




 
Interviewer
心をひとつにする、スポーツの力を実感しますね。

藤井淳志さん
日本中が湧いた野球の国際大会の舞台裏でも、とある選手がSNS上でライバルチームへの「リスペクト」を表明して話題になっていましたよね。
アスリート同士だからこそ通じ合える気持ちや、スポーツだからこそ与えられる感動というのがあるのだと実感します。
そういった意味でも、国際大会が持つ意味や果たす役割はとても大きいと感じます。

Interviewer
藤井さんから見て、世界の舞台で活躍するために求められる力や、一流アスリートに共通する条件というのはどのような点にあると思われますか?

藤井淳志さん
技術面のことやトレーニングなど、具体的なことは競技や環境によってそれぞれ異なるので、僕が偉そうなことを言うことはできません。
ただ、第一線で活躍するアスリートに共通して言えるのは“強い思いを持ち続けていること”ではないでしょうか。

Interviewer
第一回のインタビューで伺った通り、藤井さん自身も「プロ野球選手になる!」という強い思いを持ち続け、正に有言実行されたアスリートのお一人ですね。

藤井淳志さん
例えば、今海外で活躍しているある選手もその一人です。
彼とは僕が現役だった頃、シーズンオフの自主トレーニングを一緒にやっていた仲で、よくいろいろな話をしました。その選手は事あるごとに、常々「海外のチームへ行く!」と言い続けていたんです。そして2023年から、実際に海を渡って夢を叶えましたし、これからますます飛躍することでしょう。
自分が選び、信じた道を貫き、努力を続ける。これこそが、トップアスリートに共通するエネルギーの源なのではないでしょうか。




 

国籍や時間など様々な枠を超え、思いをひとつにして心を通わせることができるのも、スポーツの持つ力です。世界の舞台で活躍するトップアスリートたちの熱い思いや、スポーツの素晴らしさを広く伝えていきたいです。




藤井さんのお話から、チャンスを味方にするメンタルコントロールや、強い思いを持ち続けることの大切さなどを学び、多くの刺激をいただきました。
また、スポーツを通した経験や思いは、国や時間といったあらゆる壁を軽々と超えることができるのだと改めて実感。アジア・アジアパラ競技大会でどのような感動に出会えるのか、さらに楽しみが膨らみました。次回は2023年5月23日(火曜日)に掲載予定です。



第三回2023年5月23日(火曜日)掲載記事につづく>

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